2020年12月22日

のみたくなるなる、ぶり大根

−読み物レシピ−

〇ぶり大根


献立が決まらないままフラッと買い物に行ってみる。

何が食べたいのかよくわからない時は鮮魚かお肉のコーナーに先に行ってみると意外と答えが転がっていたりする。特に鮮魚コーナーは唐突に答えが落っこちていたりすることがあったりして・・・。


お手頃な鰤のあらを見つけてしまった。

よし!じゃあ今日はこの子で決まり。


例によって畑の大根の力を借りよう。いつでも煮大根が活躍できるようにお米のとぎ汁で煮てあく抜きをしたものを、水を張ったボールに入れて冷蔵庫に眠らせてある。これなら1週間くらい日持ちがして、いつでもすぐ煮物に使えるからご機嫌だ。


 ぶりのあらと大根が揃ったら、もう「ぶり大根」しかない。冬のゴールデンコンビだ。とろみがあってほんのり甘辛なタレが沁み沁みな柔らかな大根を口に含んで飲み込んだ後、キレのいい辛口の日本酒を一口、寒い夜なら燗酒もまた乙だ。ほろほろとあらから鰤の身をはがして、口に含む。舌鼓を打ちながら、ちょっとつけすぎちゃった熱めの燗酒を口に含むと、ぶり大根の隠し味のハチミツの甘みがふわっと鼻腔から抜けて、甘やかで幸せな気持ちになる。


あぁ、もう絶対ぶり大根煮しよう。


ぶりのあらは塩で締めた後、湯引きして余分な脂や臭みを取る。冷水で鱗や汚れを落としたら、その後アクを取りながら天然水と酒で煮る。ことこと。

上品な甘さになるようグラニュー糖やハチミツで煮込もう。甘みを含んだところで醤油と生姜汁を加えてと。煮詰まってきたら鍋を傾けて煮汁をおたまですくいかけながら更に煮詰めていく。ぐつぐつ。

大根を傷つけないように、焦げつかないように付きっきりでお世話。湯気の香りが濃くなってきた。そろそろ火を止めよう。落し蓋をして、少し休んでいてね。


そうだ、盛り付ける器を温めておこう。お湯を沸かして、器に注いだら温まるまで少し待ってと。ついでだから燗酒用のお湯も用意しよう。


家の中がおいしい湯気でどんどん暖かくなってくる。


器が温まったら水気が残らないようにしっかりふき取って盛り付ける。白髪ねぎなんかがあるとおしゃれでいいかも。最後に刻んだゆずの皮を可愛らしくあしらおう。爽やかでいい香り。

取り分け用には塗りのスプーンを使おう。大根を傷つけないし、温かみがあっていい。お気に入りの徳利とお猪口も用意してと。うきうきしてきた。


さて、いただきます。

posted by しょくぶん広報 at 10:52| Comment(1) | 読み物レシピ

2020年12月18日

大根コトコト

−読み物レシピ−


〇大根の煮物


冬の畑は大地が冷たい。長靴を履いて歩いていると足の指先が段々と冷えて痛くなってくる。頬や耳がキンキンと冷えて痛かったのが、動いて血行が良くなってくると、今度は赤くジンジンと熱くなってくる。


足元にあるトゲトゲの瑞々しく長い葉っぱの束を片手でむんずと掴み、真上に引き上げる。ほんの少しだけ左右にゆすりながら。少し根っこが切れる感触が手に伝わって、ズボッとそれは抜ける。うん、いいできだ。何回かそれを繰り返す。半分と少し泥にまみれたそれを軽トラの荷台に乗っけて帰ると、腕まくりをして心臓が痛くなりそうなくらいの冷たい水でそれの泥を落とす。と、真っ白な大根が姿を現す。


泥を脱いできれいになった大根を台所へ連れてゆく。まな板に大根を乗せて、菜っきり包丁で身と葉っぱを分ける。葉っぱは後でふりかけにしよう。身の方は34pくらいの厚さに切って、少し厚めに皮をむく。それから、ピーラーで直角の淵が丸くなるように削る、面取りだ。全ての大根が角の取れた輪切りになったら、鍋に並べていく。


そしたら鍋にお米のとぎ汁を注いで・・・。まずはお米を研ごう。

大根が待つお鍋に米のとぎ汁を注いで、アルミホイルで落し蓋をしてしばらく煮る。

コトコト。大根が鍋の中で踊っても大丈夫。角がないから、隣同士で傷つけあわない。


火を止めて鍋ごと流しに置いたら、アルミホイルの落し蓋の上から細く出した水道の水を当てる。そうして大根の芯までゆっくり冷やす。こうすると煮込んだ時に味が染みこみやすくなるんだって。


大根の芯まで冷えたら、流水で米ぬかを優しく洗い流す。煮る前と違って、柔らかな手触りでほんのり暖かくて、大切に扱わないと壊れてしまいそうなぬくもりだ。ひとつひとつそうやって洗って、違う鍋にまた並べていく。


鰹節と昆布で取っただしを張って、落し蓋をしたら火にかける。中火くらいでコトコトと。

大根がだしの中で温まってきたら、だしだけ味見してみる。味見してから、大根の味が良く引き出せる分だけお醤油と酒を入れる。またコトコト。味がなじんだら火を止めて粗熱を取る。


お気に入りのお椀に盛り付けて、つゆも少し多めに。光が当たると昇っていく湯気の粒が見える。早速食べてみよう。お箸を大根にそっと当てると、思いのほか柔らかくスッと箸が落ちていく。切り出した大根を少し冷ましてから口に運ぶ。口に入れると、大根の軟らかくなった繊維だけ少し感じて、あとはだしの味を染みこませた実の部分がジュワッと溶け出して消えていく。大根特有の苦みのある香りを残して。


そうしてつゆまで全部飲み干してお椀が空になると、お腹も足の指先も温まって、気持ちがいい。

ごちそうさまでした。

posted by しょくぶん広報 at 10:05| Comment(0) | 読み物レシピ

2020年12月14日

目が覚めたらジュラシックパークだった話。(後編)

こちらは、「目が覚めたらジュラシックパークだった話」の後編です。
前編はこちら↓↓

http://shokubun.sblo.jp/s/article/188206067.html?fbclid=IwAR2zxX_j5qrQuUgDSsu3DAkm35qI1bwt25QuRkv-ZIgJGb_aF8Xv2NUYnEw



私は車内で緊迫の時間を過ごしていた。
ドキドキする。
頭の中ではこれからのシミュレーションの最善の場合と最悪の場合を描きながら行動に移すかどうかを考えていた。

まず窓を閉めたい。
が、なるべく音を立てたくないのでエンジンはかけたくない。
スロットルを回し切らずに一段階目で止めれば静かに窓だけ閉められる。
この時、ETCカードの挿入確認のお姉さんのアナウンスが流れ始める前までに窓を閉め切ることができるかが勝負の分かれ道だ。

もし、ヤツが気づいたら車に突撃してきて、車も無傷では済むまい。中途半端に窓が開いていたら身の危険さえある。

いつやるか。
あとは、タイミングを見計らい実行するのみ。
姿勢を低く保ちヤツの動向を探る。

実行のタイミングは突然訪れた。
ふいにヤツがこちらへと向かって来る!

視線は上げず地面の匂いを嗅いだまま少しずつ間合いを詰めてくるではないか!!

こちらにはまだ気づいてないだろうがこれ以上間合いを詰められたら、急いで窓を閉めても間に合わない。やるしかないっ!!
今だっ!!

私は意を決して作戦を実行に移した。

自分の姿が見えないようになるべく体を小さく折りたたんだ。私からもヤツは見えない。この間ヤツがどんな動きをしてくるのかはもう見えない、怖い。


スロットルをそっと回す。
カチッと車にスイッチが入り、スピードメーターやタコメーターなどの計器類に明かりが灯っただろう瞬間、窓の開閉ボタンに指を引っ掛けスイッチを引きちぎらんばかりに上へ上げた。

私の切羽詰まる思いと裏腹に、虚しいくらいにいつもの速度でウィーーーンと窓が上がっていく。多分窓が上がりきったのと同時くらいだった。ETCカードの確認アナウンスの「カ」が聞こえるか聞こえないかでキーをオフにした。セーーーフっ!!セーフだよね?と思ってそっと頭を上げてヤツを確認した。


あれっ!?


また車から5メートル先の元の場所に戻っている。

全くもって気づかれていない。

いや、この場合相手にされていない・・・が正解か?


真相を確かめるべく、今できる最大の防御アイテム「窓」を手に入れた私は攻撃に転じる事にした。

短く「プッ」とクラクションを鳴らしてみた。

まるで動じない。

今度は少し長めに「プーッ」と鳴らしてみる。

全然相手にされない。


地面にはそんなにヤツを虜にするものでも埋まっているのか!

一体私のこの緊迫の数分はなんだったのか。

死ぬまでの心臓の鼓動回数が決まっているとしたら、今ものすごく無駄に心拍数を消費した気分だ。


そして、ヤツは私の見ている前でブンブンとしっぽを振り回しながら、好きなだけ民家の庭を堪能して、悠然と山へと消えていった。

その姿はT-レックスではなく、むしろ「おっことぬし様」に近いようだった。




おっことぬし様が去った後すぐさま役所へ連絡!
民家の敷地内ということもあり、いつもは渋るところをすぐさま捕獲用の檻を設置してくれた。

可哀想と思われる方もいるかと思うが、田んぼでフンをされてしまうとその田んぼのお米は臭くなってしまう。その年は出来の良い米を諦めるしかない。そして匂いが残ったその田んぼは翌年も被害に遭う可能性が高い。畑の農作物も凄まじい勢いで被害を受ける。安定して生産物を食卓へ供給するために、生きていくために、現場にいる者が彼らに引導を渡すその役を引き受ける他ないのだ。

(
お察しの方もいるかと思うが、この話はこれからやや暗めな方向に向かいます。
でもぜひ読んで、最後のボタンをポチッとしてください笑)

檻を仕掛けて3日後、罠にかかった。

かかった瞬間はガシャーーーンっ!!!とすごい音で檻の蓋が閉まるそうだ。
そしてすぐさま役所に連絡。
担当の猟師のおっちゃんが2人組でやってきた。

さて、この後どうなるでしょう?




正解は・・・その場で射殺です。

民家の敷地内だろうと関係ない。
檻の中にイノシシが入ったままだと重たくて運べないので、檻の中で射殺してから檻とイノシシとを別々に運ぶのです。

そしておっちゃんは慣れた様子で準備を整えていく。

静寂の後、1発目の銃声。

しんと静かな森の木々の隙間に銃声が何度もこだましながら吸い込まれていく。
まだ音の波が消えないうちに2発目。
1
発目の銃声を追いかけるように方々へ音が散って行った。

暫くして、動かなくなる。鼓動がなくなり目から光が消えていく。

以下、わかる例えから私という人をイメージして欲しい。

私はモンハンと言われる一世を風靡したゲーム内で、モンスターの皮を剥ぎ取るという行為が可哀想でできない。デジタルの命にさえ情が移るタイプだ。

よそ様の家の大型犬が死んでしまい、簡単なお葬式に呼ばれた際、あまりのショックで吐き戻し飼い主家族を引かせたことがある。

映画ジュラシックワールドでブルーという名のラプトル(人間と意思疎通を図れるように特訓された賢い小さめな肉食恐竜)一頭を残し他の仲間のラプトルが全滅した際、映画館で割と本格的に泣いたことがある。

YKK「幼なじみ」というタイトルの猫と女の子のCMは何回見ても未だに泣ける。

以上の点からもわかるように私はとてつもなく情緒が不安定な30代独身の女だ。

いくら害獣とはいえイノシシ殺ってやったぜ!ウェーイ!!とはなれない。そういう人もいる、それは事実。むしろ田舎じゃ私が変人。彼らはもう、そういうものに折り合いをつけて早々と線引きをしているプロなのだ。というか生まれた時からそれが日常なのだ。

だが、間違いなくあの2発の銃声は私の心に爪痕を残した。目の前にある命を奪う音を生まれて初めて聞いたからだ。遠くで銃声を聞いたことはあったけど(多分カラス避けとか)、一つの命を消すためだけの音は初めて聞いた。

檻とイノシシとを別々にトラックの荷台に乗せて、おっちゃんたちは去って行った。
この後、おっことぬし様は解体場で切り分けられ希望者に配られる。

さっきまでこの場所で1番強かったはずのイノシシは夕方にはただのブロックになっているのだ。なんとも居た堪れない。
地面に残ったその血をぼんやり暫く眺めていた。

野菜やお米のお値段にはそんな現場の出来事も含まれていると思ってみてほしい。

そして、その命を奪いながら作った野菜だから、新鮮でおいしいうちに全部買ってもらえたらいいなと心底思う。「食品ロス削減」という言葉は、言葉以上に重みがある事を、この言葉を打ち出した人もきっと知らないのではないだろうか。

だがしかし!!案外感傷に浸っていられないくらいまだまだわんさかイノシシがいた。

急斜面の土手から予告もなく飛び出してきて車に急ブレーキを踏ませたり、農作業用トラクターに突進してきたり、民家の庭が穴だらけになったり、まだまだリアルジュラシックパークのそれである。

いろんな想いは渦巻くばかりだが、そろそろ本気で猟銃免許を取らないといけない時が来ているかもしれないと思う今日この頃だ。

そんなジュラシックパーク的な猛者たちから守り抜いた農薬不使用の冬野菜がとっても元気に育っております。皆さんのお宅に行きたくてウズウズしていると思います。


どうぞ↓↓ぜひ↓↓

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posted by しょくぶん広報 at 11:47| Comment(0) | 日記