2020年12月14日

目が覚めたらジュラシックパークだった話。(後編)

こちらは、「目が覚めたらジュラシックパークだった話」の後編です。
前編はこちら↓↓

http://shokubun.sblo.jp/s/article/188206067.html?fbclid=IwAR2zxX_j5qrQuUgDSsu3DAkm35qI1bwt25QuRkv-ZIgJGb_aF8Xv2NUYnEw



私は車内で緊迫の時間を過ごしていた。
ドキドキする。
頭の中ではこれからのシミュレーションの最善の場合と最悪の場合を描きながら行動に移すかどうかを考えていた。

まず窓を閉めたい。
が、なるべく音を立てたくないのでエンジンはかけたくない。
スロットルを回し切らずに一段階目で止めれば静かに窓だけ閉められる。
この時、ETCカードの挿入確認のお姉さんのアナウンスが流れ始める前までに窓を閉め切ることができるかが勝負の分かれ道だ。

もし、ヤツが気づいたら車に突撃してきて、車も無傷では済むまい。中途半端に窓が開いていたら身の危険さえある。

いつやるか。
あとは、タイミングを見計らい実行するのみ。
姿勢を低く保ちヤツの動向を探る。

実行のタイミングは突然訪れた。
ふいにヤツがこちらへと向かって来る!

視線は上げず地面の匂いを嗅いだまま少しずつ間合いを詰めてくるではないか!!

こちらにはまだ気づいてないだろうがこれ以上間合いを詰められたら、急いで窓を閉めても間に合わない。やるしかないっ!!
今だっ!!

私は意を決して作戦を実行に移した。

自分の姿が見えないようになるべく体を小さく折りたたんだ。私からもヤツは見えない。この間ヤツがどんな動きをしてくるのかはもう見えない、怖い。


スロットルをそっと回す。
カチッと車にスイッチが入り、スピードメーターやタコメーターなどの計器類に明かりが灯っただろう瞬間、窓の開閉ボタンに指を引っ掛けスイッチを引きちぎらんばかりに上へ上げた。

私の切羽詰まる思いと裏腹に、虚しいくらいにいつもの速度でウィーーーンと窓が上がっていく。多分窓が上がりきったのと同時くらいだった。ETCカードの確認アナウンスの「カ」が聞こえるか聞こえないかでキーをオフにした。セーーーフっ!!セーフだよね?と思ってそっと頭を上げてヤツを確認した。


あれっ!?


また車から5メートル先の元の場所に戻っている。

全くもって気づかれていない。

いや、この場合相手にされていない・・・が正解か?


真相を確かめるべく、今できる最大の防御アイテム「窓」を手に入れた私は攻撃に転じる事にした。

短く「プッ」とクラクションを鳴らしてみた。

まるで動じない。

今度は少し長めに「プーッ」と鳴らしてみる。

全然相手にされない。


地面にはそんなにヤツを虜にするものでも埋まっているのか!

一体私のこの緊迫の数分はなんだったのか。

死ぬまでの心臓の鼓動回数が決まっているとしたら、今ものすごく無駄に心拍数を消費した気分だ。


そして、ヤツは私の見ている前でブンブンとしっぽを振り回しながら、好きなだけ民家の庭を堪能して、悠然と山へと消えていった。

その姿はT-レックスではなく、むしろ「おっことぬし様」に近いようだった。




おっことぬし様が去った後すぐさま役所へ連絡!
民家の敷地内ということもあり、いつもは渋るところをすぐさま捕獲用の檻を設置してくれた。

可哀想と思われる方もいるかと思うが、田んぼでフンをされてしまうとその田んぼのお米は臭くなってしまう。その年は出来の良い米を諦めるしかない。そして匂いが残ったその田んぼは翌年も被害に遭う可能性が高い。畑の農作物も凄まじい勢いで被害を受ける。安定して生産物を食卓へ供給するために、生きていくために、現場にいる者が彼らに引導を渡すその役を引き受ける他ないのだ。

(
お察しの方もいるかと思うが、この話はこれからやや暗めな方向に向かいます。
でもぜひ読んで、最後のボタンをポチッとしてください笑)

檻を仕掛けて3日後、罠にかかった。

かかった瞬間はガシャーーーンっ!!!とすごい音で檻の蓋が閉まるそうだ。
そしてすぐさま役所に連絡。
担当の猟師のおっちゃんが2人組でやってきた。

さて、この後どうなるでしょう?




正解は・・・その場で射殺です。

民家の敷地内だろうと関係ない。
檻の中にイノシシが入ったままだと重たくて運べないので、檻の中で射殺してから檻とイノシシとを別々に運ぶのです。

そしておっちゃんは慣れた様子で準備を整えていく。

静寂の後、1発目の銃声。

しんと静かな森の木々の隙間に銃声が何度もこだましながら吸い込まれていく。
まだ音の波が消えないうちに2発目。
1
発目の銃声を追いかけるように方々へ音が散って行った。

暫くして、動かなくなる。鼓動がなくなり目から光が消えていく。

以下、わかる例えから私という人をイメージして欲しい。

私はモンハンと言われる一世を風靡したゲーム内で、モンスターの皮を剥ぎ取るという行為が可哀想でできない。デジタルの命にさえ情が移るタイプだ。

よそ様の家の大型犬が死んでしまい、簡単なお葬式に呼ばれた際、あまりのショックで吐き戻し飼い主家族を引かせたことがある。

映画ジュラシックワールドでブルーという名のラプトル(人間と意思疎通を図れるように特訓された賢い小さめな肉食恐竜)一頭を残し他の仲間のラプトルが全滅した際、映画館で割と本格的に泣いたことがある。

YKK「幼なじみ」というタイトルの猫と女の子のCMは何回見ても未だに泣ける。

以上の点からもわかるように私はとてつもなく情緒が不安定な30代独身の女だ。

いくら害獣とはいえイノシシ殺ってやったぜ!ウェーイ!!とはなれない。そういう人もいる、それは事実。むしろ田舎じゃ私が変人。彼らはもう、そういうものに折り合いをつけて早々と線引きをしているプロなのだ。というか生まれた時からそれが日常なのだ。

だが、間違いなくあの2発の銃声は私の心に爪痕を残した。目の前にある命を奪う音を生まれて初めて聞いたからだ。遠くで銃声を聞いたことはあったけど(多分カラス避けとか)、一つの命を消すためだけの音は初めて聞いた。

檻とイノシシとを別々にトラックの荷台に乗せて、おっちゃんたちは去って行った。
この後、おっことぬし様は解体場で切り分けられ希望者に配られる。

さっきまでこの場所で1番強かったはずのイノシシは夕方にはただのブロックになっているのだ。なんとも居た堪れない。
地面に残ったその血をぼんやり暫く眺めていた。

野菜やお米のお値段にはそんな現場の出来事も含まれていると思ってみてほしい。

そして、その命を奪いながら作った野菜だから、新鮮でおいしいうちに全部買ってもらえたらいいなと心底思う。「食品ロス削減」という言葉は、言葉以上に重みがある事を、この言葉を打ち出した人もきっと知らないのではないだろうか。

だがしかし!!案外感傷に浸っていられないくらいまだまだわんさかイノシシがいた。

急斜面の土手から予告もなく飛び出してきて車に急ブレーキを踏ませたり、農作業用トラクターに突進してきたり、民家の庭が穴だらけになったり、まだまだリアルジュラシックパークのそれである。

いろんな想いは渦巻くばかりだが、そろそろ本気で猟銃免許を取らないといけない時が来ているかもしれないと思う今日この頃だ。

そんなジュラシックパーク的な猛者たちから守り抜いた農薬不使用の冬野菜がとっても元気に育っております。皆さんのお宅に行きたくてウズウズしていると思います。


どうぞ↓↓ぜひ↓↓


posted by しょくぶん広報 at 11:47| Comment(0) | 日記
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