−読み物レシピ−
〇ぶり大根
献立が決まらないままフラッと買い物に行ってみる。
何が食べたいのかよくわからない時は鮮魚かお肉のコーナーに先に行ってみると意外と答えが転がっていたりする。特に鮮魚コーナーは唐突に答えが落っこちていたりすることがあったりして・・・。
お手頃な鰤のあらを見つけてしまった。
よし!じゃあ今日はこの子で決まり。
例によって畑の大根の力を借りよう。いつでも煮大根が活躍できるようにお米のとぎ汁で煮てあく抜きをしたものを、水を張ったボールに入れて冷蔵庫に眠らせてある。これなら1週間くらい日持ちがして、いつでもすぐ煮物に使えるからご機嫌だ。
ぶりのあらと大根が揃ったら、もう「ぶり大根」しかない。冬のゴールデンコンビだ。とろみがあってほんのり甘辛なタレが沁み沁みな柔らかな大根を口に含んで飲み込んだ後、キレのいい辛口の日本酒を一口、寒い夜なら燗酒もまた乙だ。ほろほろとあらから鰤の身をはがして、口に含む。舌鼓を打ちながら、ちょっとつけすぎちゃった熱めの燗酒を口に含むと、ぶり大根の隠し味のハチミツの甘みがふわっと鼻腔から抜けて、甘やかで幸せな気持ちになる。
あぁ、もう絶対ぶり大根煮しよう。
ぶりのあらは塩で締めた後、湯引きして余分な脂や臭みを取る。冷水で鱗や汚れを落としたら、その後アクを取りながら天然水と酒で煮る。ことこと。
上品な甘さになるようグラニュー糖やハチミツで煮込もう。甘みを含んだところで醤油と生姜汁を加えてと。煮詰まってきたら鍋を傾けて煮汁をおたまですくいかけながら更に煮詰めていく。ぐつぐつ。
大根を傷つけないように、焦げつかないように付きっきりでお世話。湯気の香りが濃くなってきた。そろそろ火を止めよう。落し蓋をして、少し休んでいてね。
そうだ、盛り付ける器を温めておこう。お湯を沸かして、器に注いだら温まるまで少し待ってと。ついでだから燗酒用のお湯も用意しよう。
家の中がおいしい湯気でどんどん暖かくなってくる。
器が温まったら水気が残らないようにしっかりふき取って盛り付ける。白髪ねぎなんかがあるとおしゃれでいいかも。最後に刻んだゆずの皮を可愛らしくあしらおう。爽やかでいい香り。
取り分け用には塗りのスプーンを使おう。大根を傷つけないし、温かみがあっていい。お気に入りの徳利とお猪口も用意してと。うきうきしてきた。
さて、いただきます。